はじめに:「うちは普通の家庭だから関係ない」はもう古い?

「相続税なんて、豪邸に住んでいる大金持ちだけの話でしょう?」
「うちは預金もそんなにないし、税務署なんて関係ないわ」
もし、あなたがそう思っているとしたら、少し危険かもしれません。
かつては確かに、相続税は一部の富裕層だけの税金でした。しかし、2015年(平成27年)の税制改正によって、その常識はガラリと変わりました。
この改正で、相続税がかかるかどうかの基準(基礎控除額)が、なんと「40%も引き下げ」られたのです。
これにより、都市部に一戸建てを持っているご家庭であれば、普通のサラリーマン家庭であっても相続税の対象になるケースが急増しました。
「自分は関係ないと思っていたら、ある日突然、税務署からお尋ねが届いた…」
そんな事態にならないために、まずはご自身の家が「税金がかかるボーダーライン」を超えているのかどうか、セルフチェックしてみましょう。
運命の分かれ道。「基礎控除(きそこうじょ)」とは?

相続税には、「ここまでの金額なら、税金は一切とりませんよ」という非課税枠があります。 これを「基礎控除(きそこうじょ)」と呼びます。
ルールは非常にシンプルです。
- 遺産総額 ≦ 基礎控除額 → 相続税は0円。申告の手続きすら不要です。
- 遺産総額 > 基礎控除額 → 枠からはみ出した部分に対して税金がかかります。10ヶ月以内の申告が必要です。
つまり、この「基礎控除額」をご自身の家庭に合わせて計算できるかどうかが、最初のステップになります。
【計算式】3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

では、実際に計算してみましょう。 公式はたった一つです。暗記する必要はありませんので、メモのご用意を。
基礎控除額 = 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)
この式に、亡くなった方の相続人の数を当てはめるだけです。
ケーススタディで確認してみよう
パターンA:妻と子供2人の場合(相続人=3人)
- 計算:3,000万円 + (600万円 × 3人) = 4,800万円
- 判定:遺産が4,800万円以下なら、税金はかかりません。
パターンB:妻と子供1人の場合(相続人=2人)
- 計算:3,000万円 + (600万円 × 2人) = 4,200万円
- 判定:遺産が4,200万円以下なら、税金はかかりません。
パターンC:子供もおらず、妻1人だけの場合(相続人=1人)
- 計算:3,000万円 + (600万円 × 1人) = 3,600万円
- 判定:遺産が3,600万円以下なら、税金はかかりません。
いかがでしょうか?
相続人の数が減れば減るほど、ボーダーラインが下がっていく(=課税されやすくなる)ことがわかります。特に少子化や核家族化が進む現代では、意外とこのラインを超えてしまうケースが多いのです。
要注意!計算に入れるべき「遺産」の落とし穴

「うちは預金が1,000万円しかないから余裕だ!」
そう安心するのはまだ早いです。
相続税の計算における「遺産総額」とは、預貯金だけではありません。以下のようなものも全て足し合わせる必要があります。これを間違えると、後で大変なことになります。
① 不動産(土地・建物)
ここが最大の落とし穴です。 「買った時の値段」や「固定資産税の通知書の値段」ではありません。 土地は「路線価(ろせんか)」という、国が定めた道路の値段をもとに計算します。
特に、東京、大阪、名古屋などの都市部や、駅近のマンションをお持ちの場合、ご自身が思っている以上に評価額が高くなることがあります。
「家と土地だけで4,000万円」という評価がつけば、先ほどのパターンC(基礎控除3,600万円)のご家庭は、預金がゼロでもアウト(課税対象)になります。
② みなし相続財産(生命保険・退職金)
亡くなったことによって受け取る「死亡保険金」や「死亡退職金」も、計算上は遺産に含まれます。
(※ただし、これらには強力な非課税枠があります。後述します)
③ 生前贈与(亡くなる直前のプレゼント)
「税金を減らすために、死ぬ直前に預金を子供に移した」
これは通用しません。 亡くなる「3年以内(法改正により順次7年以内へ延長中)」に行われた贈与は、相続財産に持ち戻して(足し直して)計算するというルールがあります。
税金を減らせる「魔法の控除」を使い倒そう

「計算したら基礎控除を超えてしまった!税金を払わないといけないの?」
諦めるのはまだ早いです。 基礎控除以外にも、「特例」や「非課税枠」をうまく使うことで、税金をゼロにできる可能性があります。
生命保険金の非課税枠
生命保険には、残された家族の生活を守るために、以下の非課税枠が用意されています。
500万円 × 法定相続人の数
例えば相続人が3人なら、1,500万円までの保険金は「なかったこと」にして計算できます。
現金をそのまま持っておくより、保険に変えておくことで節税になるのはこのためです。
配偶者の税額軽減
これは最強の特例です。
配偶者(妻や夫)が相続する財産については、「1億6,000万円」または「法定相続分」のどちらか多い金額まで、税金がかかりません。
つまり、配偶者が相続する限り、ほとんどの家庭で相続税はゼロになります。
(※ただし、この特例を使うためには「申告書の提出」が絶対に必要です。「0円だから何もしなくていい」わけではないので注意してください!)
まとめ:自己判断は危険!怪しいと思ったら試算を

相続税の申告期限は、「亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」です。 もし、この期限を1日でも過ぎてしまうと、使えるはずの「配偶者の税額軽減」などの特例が使えなくなり、本来払わなくて済んだはずの数百万円の税金を請求されることになります。
「うちはギリギリ大丈夫そうかな?」
「土地の値段がいくらになるかわからない」
このように少しでも不安を感じたり、ボーダーライン前後にいそうな場合は、自分で判断して放置するのが一番危険です。
まずは専門家に依頼して「相続税の試算(シミュレーション)」を行ってみましょう。
「税金がかかるかどうかの判定」だけであれば、比較的安価で相談に乗ってくれる税理士事務所も多いです。
安心をお金で買うつもりで、一度プロの目で見てもらうことを強くおすすめします。
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