はじめに:銀行窓口での「待ち時間」に絶望していませんか?

相続の手続きを実際に始めた方が、最初の数日で心を折られそうになる瞬間があります。 それは、銀行の窓口でのことです。
「亡くなった父の預金を解約したいのですが…」
そう伝えて、苦労して集めた厚さ数センチにもなる「戸籍謄本(こせきとうほん)の束」を窓口に提出します。すると、行員さんは申し訳なさそうにこう言うのです。
「確認しますので、ロビーでお待ちください。(…たぶん1時間以上かかります)」
待っている間、あなたは何もできません。 さらに手続きが終わっても、原本を返してもらうまで帰れません。なぜなら、その原本を持って、次はB銀行に行かなければならないからです。
「銀行が5つあるから、これをあと4回繰り返すの…?」
そんな途方もない作業にうんざりしているあなたに、朗報です。 2017年から始まった「法定相続情報証明制度(ほうていそうぞくじょうほうしょうめいせいど)」を使えば、この苦行から解放されます。
今回は、名前は漢字ばかりで難しそうですが、使うと相続手続きの常識が変わる「魔法の紙」について、どこよりも詳しく解説します。
そもそも「法定相続情報証明制度」とは?

一言でいうと、「法務局(役所)がお墨付きを与えた、公式の家系図」のことです。
これまでの相続手続きでは、自分が相続人であることを証明するために、以下の書類の束(セット)を毎回提出する必要がありました。
- 亡くなった人の「生まれてから死ぬまで」の連続した戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍(5〜10通になることもザラです)
- 相続人全員の現在の戸籍謄本
銀行側は、この束を一枚一枚チェックし、「この人とこの人が親子で…他に隠し子はいないか…」と読み解く作業を行います。これが待ち時間の原因です。
しかし、この制度を利用すると、法務局に一度だけ戸籍の束を提出してチェックを受けることで、「法定相続情報一覧図の写し」という証明書を発行してもらえます。
これはいわば、「国が認めた、相続人メンバーリスト」です。
これ以降は、分厚い戸籍の束を持ち歩く必要はありません。 この「紙ペラ一枚」を出すだけで、銀行も法務局も「はい、OKです!」と即座に手続きを受け付けてくれるようになるのです。
使わないと絶対に損!3つの強烈なメリット

「わざわざ新しい書類を作るなんて面倒くさい」 そう思うかもしれませんが、それを補って余りあるメリットがあります。
メリット①:複数の手続きを「同時進行」できる(最強の時短)
これが最大のメリットです。 戸籍謄本の原本は、1セット揃えるだけで数千円かかるため、多くの人は1セットを使い回します。 「A銀行が終わったら返してもらい、次はB銀行へ、その次は法務局へ…」と、リレー形式でしか進められません。これでは完了まで数ヶ月かかってしまいます。
しかし、「法定相続情報一覧図」は、必要な枚数だけ何枚でも発行してもらえます。
例えば5枚発行してもらえば、
- A銀行(郵送)
- B銀行(窓口)
- C証券会社(郵送)
- 法務局(不動産の名義変更)
- 税務署(相続税の申告)
これら全ての手続きを、「せーの!」で同時にスタートできるのです。手続き完了までの期間が劇的に短縮されます。
メリット②:発行手数料が「無料」
信じられないかもしれませんが、この証明書の発行手数料は0円です。 戸籍謄本を何通も取得すると数千円かかりますが、この証明書なら「銀行用、証券用、保険用、予備…」と10枚もらってもタダです。 (※ただし、最初に集める戸籍謄本代や、郵送で受け取る場合の切手代はかかります)
メリット③:窓口での手続き時間が圧倒的に早くなる
銀行員にとっても、古い手書きの戸籍を読み解くのは大変なストレスと時間がかかる作業です。 しかし、この証明書があれば一目で「誰が相続人か」が分かります。確認作業が数分で終わるため、結果としてあなたの待ち時間も大幅に減るのです。
どんな人が使うべき?おすすめチェックリスト

全ての相続に必須というわけではありませんが、以下の項目に一つでも当てはまる方は、絶対に取得することをおすすめします。
- 亡くなった方が、銀行や証券会社の口座を3つ以上持っている
- 不動産の名義変更(相続登記)をする予定がある
- 相続税の申告が必要だ
- 平日は仕事をしていて、何度も銀行に行く時間がない
- 兄弟姉妹が多く、戸籍の枚数がやたらと多い
- 郵送で手続きを済ませたい
取得までの具体的な流れ(4ステップ)

では、実際にどうやって取得するのか、手順を見ていきましょう。
STEP 1:まずは「戸籍謄本」を一式集める
ここだけは従来通り頑張る必要があります。証明書を作る根拠資料として、一度だけ「出生から死亡までの戸籍」などを役所で全て集めます。
STEP 2:「一覧図(家系図)」を作成する
ここが一番のハードルです。 法務局のホームページからエクセル等の様式(テンプレート)をダウンロードし、ご自宅のパソコンなどで「誰が亡くなって、誰が相続人か」という家系図を作成します。 ※手書きでも可能ですが、黒ボールペンではっきりと書く必要があります。
STEP 3:法務局へ申出(提出)する
集めた戸籍と、作成した一覧図を法務局へ提出します。 提出先は、「亡くなった人の本籍地」「最後の住所地」「申出人の住所地」「亡くなった人の不動産の所在地」のいずれかを管轄する法務局です。郵送での提出も可能です。
STEP 4:証明書が発行される
登記官が内容を確認し、間違いがなければ「認証文」付きの専用紙に印刷されて戻ってきます。
※提出から発行までは、1週間〜2週間程度かかることが多いです。
まとめ:パソコン作業が苦手ならプロに頼ろう

「法定相続情報証明制度」は、その後の手続きを劇的に楽にする「魔法のチケット」です。 特に、手続き先が多い方にとっては、精神的な負担を大きく減らしてくれるでしょう。
ただ、唯一の難点は「自分で一覧図(家系図)を作らなければならない」という点です。
「パソコンで図形を描くのが苦手」
「厳密なルール通りに作る自信がない」
という理由で挫折してしまう方もいらっしゃいます。
そんな時は、無理せず司法書士や行政書士にご相談ください。 多少の報酬はかかりますが、戸籍の収集から一覧図の作成、法務局への提出まで、面倒な作業をすべて代行してもらえます。
「時は金なり」です。 書類作成に悩んで何日も費やすより、プロに任せて「魔法のチケット」を手に入れ、サクサクと手続きを終わらせてしまいましょう。
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